相次ぐ大規模な情報漏洩。AI時代に企業はどう備える?

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「また情報漏洩のニュースが出ている」と感じることはありませんか。

普段使っているサービスや、名前をよく知る企業の情報漏洩は、利用者にとっても気になる問題です。企業の担当者としてニュースを見ていると、「自社の対策は大丈夫だろうか」と不安になることもあるでしょう。

情報漏洩の原因は、外部からの攻撃だけではありません。従業員のミスや内部不正、委託先での事故など、さまざまなところにリスクがあります。さらに、AIの普及によって、攻撃の手口や業務での情報の扱い方にも変化が生まれています。

大規模な情報漏洩を防ぐために、企業はどのような備えをすればよいのでしょうか。最近のセキュリティを取り巻く状況と、情報を守る仕組みづくりについて紹介します。

相次ぐ情報漏洩を「他社の問題」で終わらせない

情報漏洩のニュースは、自社の対策を見直すきっかけになる

情報漏洩や不正アクセスに関する発表では、「流出を確認した」「流出のおそれがある」「現在調査している」など、被害の確認状況が異なります。ニュースを見るときは、これらを区別して受け止める必要があります。

一方、企業の担当者にとっては、被害が確定してからでなければ参考にできないわけではありません。

「自社でも同じような情報を扱っている」「似たサービスを使っている」と気づけば、アクセス権限や設定を見直すきっかけになります。

IPAの「情報セキュリティ10大脅威2026」では、組織向けの1位が「ランサム攻撃による被害」、2位が「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」です。自社への攻撃と、外部とのつながりを通じた被害の両方に備える必要があります。

大規模な被害につながるのは、情報が集まっている場所

顧客管理システムや会員サービス、社内の共有ストレージには、大量の情報が集まっています。

こうした場所のアカウントが乗っ取られたり、公開範囲の設定を間違えたりすると、一度に多くの情報が流出する可能性があります。

守るべき情報は、氏名やメールアドレスだけではありません。契約内容、購入履歴、従業員情報、未公開の資料なども対象です。

情報がどれだけ漏れたかに加え、どのような情報が漏れたかによって、被害の深刻さは変わります。

大規模な情報漏洩は、どこから起こる?

盗まれたアカウントや、システムの弱点から侵入される

外部からの攻撃では、盗まれたID・パスワードや、修正されていないシステムの弱点が侵入口になることがあります。

攻撃者にとって、正規のアカウントでログインできれば、業務で使う情報にアクセスする足がかりになります。そのアカウントの権限が広いほど、被害も大きくなりかねません。

また、ランサムウェアの被害では、業務に必要なデータが使えなくなるだけでなく、情報を盗まれることも問題になります。

バックアップがあれば業務を復旧できる可能性はありますが、盗まれた情報の流出まで防げるわけではありません。

ミスや内部不正も、大量流出につながる

メールの宛先を間違える、共有ファイルを誰でも見られる設定にするなど、日常業務のミスが漏洩につながることもあります。

悪意のある持ち出しにも注意が必要です。業務上アクセスできる人であっても、すべての情報を自由にダウンロードできる状態が適切とは限りません。

「社内の人だから大丈夫」と考えるだけでなく、必要な情報だけを扱える権限にすることが大切です。

委託先や外部サービスのリスクも関係する

顧客対応やシステム運用を外部へ委託している企業も多いでしょう。クラウドサービスを利用して、情報を管理しているケースもあります。

便利な仕組みですが、自社の外で誰が情報を扱い、どこまでアクセスできるのかが見えにくくなることもあります。

委託した後も、提供する情報の範囲や管理方法を確認する必要があります。「外部に任せているから安心」で終わらせず、自社の情報がどのように扱われているかを把握しておきましょう。

AIの普及で、情報漏洩リスクはどう変わる?

自然な文章の攻撃メールが作りやすくなる

怪しいメールを見分けるとき、不自然な日本語を手がかりにしている方もいるのではないでしょうか。

しかし、生成AIによって、自然な文章や相手に合わせた内容を作りやすくなっています。丁寧な文章で、仕事の依頼として違和感がなくても、それだけで安全とは判断できません。

IPAも、AIの悪用による攻撃の容易化や手口の巧妙化を指摘しています。文章の印象に加え、送信元や依頼内容、リンク先を確認することが必要です。

攻撃側の作業が速くなると、対策の遅れが弱点になる

AIは、情報収集やシステムの弱点を探す作業などにも利用され得ます。

英国の国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)は、AIがサイバー攻撃の一部を効率化し、脅威の頻度や強度を高めると予測しています。特に、修正されていない既知の弱点を悪用する攻撃への警戒が必要です。

もちろん、最近の情報漏洩がすべてAIによって起きたわけではありません。ただ、攻撃側の作業が速くなるなら、企業側も「更新は時間ができてから」と後回しにしにくくなります。

便利なAI利用が、情報の持ち出しになることもある

企業側のAI利用にも、新しいリスクがあります。

例えば、会議の議事録を要約するために、顧客情報や未公開の資料を、会社が許可していないAIサービスへ入力するケースです。本人は仕事を効率化したつもりでも、社外への情報提供につながる可能性があります。

IPAは、こうした無許可の業務利用を「シャドーAI」として紹介しています。

入力した情報の保存や利用の条件は、サービスの契約・設定によって異なります。業務で使えるサービスと、入力してよい情報を明確にすることが、安全な活用の第一歩です。

日本の罰則だけで、情報漏洩は防げる?

日本にも罰則はあるが、漏洩すれば一律に罰金という仕組みではない

情報漏洩が続くと、「もっと厳しい罰則が必要では」と感じることもあるでしょう。

日本にも、個人情報の取扱いに関する罰則があります。個人情報保護法では、個人情報保護委員会の命令への違反や、個人情報データベース等の不正提供などについて、一定の場合に法人へ最大1億円の罰金が科される可能性があります。

ただし、情報漏洩が発生すれば、自動的にこの罰金が科されるわけではありません。事故の内容や違反した義務によって、対応や責任は変わります。

そのため、「日本は罰則が軽いから情報漏洩が多い」と、原因を一つに絞ることはできません。

罰則とは別に、事故を防ぐ仕組みが必要になる

法制度の強化も進んでいます。2026年7月には、課徴金制度の導入を含む個人情報保護法の改正法が公布されました。改正法は、一部を除き、公布から2年以内の政令で定める日から施行されます。

ただ、制度が強化されても、システムの弱点や設定ミスが自動的に解消されるわけではありません。

企業にとっては、罰金だけでなく、調査・復旧の負担や、顧客・取引先への影響も問題です。法律を守ることと並行して、事故が起きにくい環境をつくる必要があります。

情報漏洩を防ぐ鍵は、仕組みづくり

「気をつけましょう」「ルールを守りましょう」という呼びかけは大切です。ただ、人の注意だけで、すべてのミスや攻撃を防ぐのは難しいものです。

そこで重要になるのが、情報を守る仕組みを設計・実装し、運用しながら改善するエンジニアリングです。

持つ情報と、アクセスできる範囲を絞る

まずは、不要になった情報を保存し続けていないかを確認します。保存期間を決め、必要のないデータを削除すれば、万一の漏洩で影響する情報を減らせます。

アクセス権限も同様です。担当業務に必要な範囲へ絞り、異動や退職に合わせて見直します。

一つのアカウントが被害に遭っても、すべての情報へアクセスされる状態を避けることがポイントです。

認証・更新・設定の確認を、日々の運用に組み込む

ログイン時にパスワード以外の確認を加える多要素認証、システムの更新、ファイルの公開範囲の点検などは、基本となる対策です。

大切なのは、一度導入して終わりにしないことです。使わなくなったアカウントや古いシステム、例外的に設定を緩めた箇所が残っていないか、継続して確認します。

新しいシステムをつくる際も、設計の段階から「誰が、何を扱えるか」を考えておくと、運用開始後の無理な対応を減らせます。

異常を早く見つけ、被害の拡大を抑える

普段と違う場所からのログインや、大量のファイルのダウンロードに気づければ、早い段階で対応できる可能性があります。

操作の記録を残すだけでなく、異常を検知して担当者へ知らせ、確認や停止につなげる仕組みが必要です。

重要なシステムやデータを適切に分けることも、被害を広げにくくする対策になります。「侵入させない」とともに、「侵入されても被害を抑える」という視点を持ちましょう。

AIを安全に使える環境を用意する

AIについては、利用を禁止するだけでなく、安全に使える選択肢を用意することも大切です。

会社が承認したサービス、入力してよい情報、利用時の確認事項を整理すれば、従業員も判断しやすくなります。

また、社内資料と連携するAIでは、利用者ごとの閲覧権限を守る設計が必要です。本来見られない資料の内容が、AIへの質問によって取り出せてしまう状態は避けなければなりません。

便利さと安全性を両立するためにも、ルールとシステムの両面から整えていきましょう。

まとめ|相次ぐ情報漏洩を、自社の仕組みを見直すきっかけに

情報漏洩のニュースは、自社の情報の扱い方を見直すきっかけになります。AIの普及で攻撃や業務の進め方が変わる中、以前の対策が今も十分に機能しているかを確認することが大切です。

社内教育やルールに加えて、アクセス権限、認証、更新、監視などを組み合わせれば、人の注意をシステムで支えられます。

その仕組みを形にするのが、エンジニアリングの役割です。

まずは「どんな情報を持っているか」「誰がアクセスできるか」「異常が起きたら気づけるか」を確認してみましょう。日々の業務を支えるシステムの見直しが、大規模な情報漏洩への備えにつながります。

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