営業とエンジニアを連携させるポイント 一つのチームとしてタッグを組むには

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営業とエンジニアは、同じ顧客を担当する一つのチームです。にもかかわらず、「営業とエンジニアがバチバチに対立している」「プロジェクトの進行中に衝突が起きる」といった話を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

こうした対立は、単に部署が離れているから起こるわけではありません。実際、製販一体型の部門や、同じフロアに席を並べているチームであっても、摩擦が発生するケースは珍しくありません。
つまり、物理的な距離ではなく、「理解のギャップ」こそが対立の根本にあるのです。

では、なぜ営業とエンジニアの間ですれ違いが起きやすいのでしょうか。この記事では、それぞれの立場からの不満や対立の背景、そして連携を高めるためのアプローチについて掘り下げていきます。

営業がエンジニアに対して不満を持ちやすい要因

お客様視点の不足

営業の立場から見ると、エンジニアが「ユーザー視点を持っていない」と感じる場面は少なくありません。たとえば、システムの利便性や運用しやすさよりも、技術的な完成度や自分の得意なフレームワークにこだわってしまう。
結果として、実際に使う人の業務負担が増えるような設計になることがあります。

営業は日々顧客と対話し、課題や不満を肌で感じているため、「なぜこの仕様に?」という疑問を持ちやすいのです。エンジニアが実業務に与える影響まで想像せず、技術面だけで判断してしまうことが、誤解や不信感につながります。

案件を選り好みする

営業は会社の売上を担う立場として、なるべく多くの案件を受注したいと考えます。しかし、エンジニアの側が「古い技術はやりたくない」「前提が曖昧で負荷が高そう」などと案件を選り好みするように見えると、フラストレーションが溜まります。

もちろんエンジニアにもリソース管理や品質担保の責任があるため、すべての案件を引き受けるわけにはいきませんが、その事情が共有されていないと「非協力的」「売上に無関心」といった印象を与えてしまうのです。

エンジニアが営業に対して不満を持ちやすい要因

顧客の要望をそのまま持ってくる

エンジニア側の不満としてよく挙がるのが、「営業が無理な要望をそのまま持ってくる」という点です。納期が短すぎる、仕様が曖昧、技術的に困難──そうした依頼を“お客さんに頼まれたから”という理由だけで通そうとする姿勢に、エンジニアは違和感を覚えます。

営業としては関係性を築くことが最優先であり、多少の無理を通してでも顧客の要望に応えたいと考えます。しかし、無理な要求が現場の疲弊や品質低下につながることへの配慮がなければ、「現実を分かっていない」と不満が募ります。

技術知識の不足

もう一つの要因は、営業の技術理解の浅さです。基本的なシステム構成や実装負荷の感覚がないまま提案し、見積もりを軽視してしまう。エンジニアにとっては「どうしてそんな前提で話が進んでいるのか?」という驚きがあり、それが安請け合いやトラブルの元になるケースも少なくありません。

また、営業が自社の開発リソースやスキルセットを正確に把握せず、大きな案件を獲得してくることで、現場が火消しに追われることもあります。こうした“風呂敷を広げすぎる営業”に対し、エンジニアは警戒心を抱くようになります。

営業とエンジニアの対立の背景

業務内容の違いが生む摩擦

営業とエンジニアは、それぞれ異なる職務と責任を担っています。営業の主な役割は、顧客との関係構築、課題のヒアリング、案件の獲得です。数字目標を背負い、顧客満足度を高めながらビジネスチャンスを広げていくのが仕事です。

一方、エンジニアは技術的な視点からシステムの設計や構築、品質管理、運用などを担い、納品物の精度や安定性を重視します。

このように、重視するポイントが根本から異なるため、同じプロジェクトに関わっていても、物事の優先順位やアプローチにズレが生じやすいのです。営業からすれば「顧客の熱量が高いうちに早く提案したい」のに対し、エンジニアは「仕様が固まらない限り設計できない」といった具合です。

目指す目標のズレ

営業には売上目標という明確なゴールがあります。時には、目標達成のために「多少無理してでも引き受けたい」という思いが先行し、納期やコストを後回しにしてしまうこともあります。

一方、エンジニアは限られた工数やリソース、技術的制約の中で最適な解決策を導き出す必要があります。顧客の期待を超えたい気持ちはあっても、それが現実的でなければ、無理をして対応するわけにはいきません。

この「売上至上主義」と「技術的現実主義」のぶつかり合いが、営業とエンジニアの間に目に見えない壁を作ってしまうのです。

対立を解消するためのアプローチ

情報共有と相互理解の促進

溝を作る元となるミスコミュニケーションの多くは、「知っている前提」「伝えたつもり」が原因で発生します。営業は、顧客との打ち合わせ内容や背景、決裁者の意向など、エンジニアが設計や見積もりに役立てられる情報を可能な限り共有することが重要です。

また、エンジニアから営業に対しても、「なぜこの仕様では難しいのか」「どの部分にリスクがあるのか」といった技術的な前提を丁寧に説明することで、理解のギャップを埋めることができます。

役割の整理と明確化

トラブルになりがちなのが「誰がどこまでやるのか」が曖昧な状態です。たとえば、エンジニアが顧客との打ち合わせに同席した際、「技術の話だけでなくスケジュールや費用の話も聞かれた」など、範囲外の対応を求められることがあります。

こうした混乱を避けるためには、営業とエンジニアそれぞれの役割と責任範囲をあらかじめ明確にしておくことが大切です。社内で共通認識を持つだけでなく、必要に応じて顧客にも伝えるようにしましょう。

共通の目標を設定する

対立の根本には、目指すべきゴールの違いがあります。だからこそ、「売上」や「技術」の先にある、チームとしての共通目標を設定することが有効です。

たとえば、「納期内で最高品質の成果物を提供する」「顧客に長く使ってもらえるサービスをつくる」「次のプロジェクトにもつながる関係性を築く」など、営業とエンジニアの双方が納得できる目標を明確にしましょう。

目標が共有されることで、立場の違いを超えた協力関係が生まれ、チームとしての一体感が強まります。

対立を超えた強力なチームの在り方

お互いの強みを活かす

営業にはヒアリング力、関係構築力、ビジネス視点があります。一方、エンジニアには技術力、課題解決力、実行力があります。どちらが優れているという話ではなく、それぞれの強みを活かし合うことが、チームの成果を最大化させる鍵です。

営業がエンジニアに「こういう提案なら実現可能か?」と相談し、エンジニアが「この技術なら提案価値が高まる」と営業に提案する──そんな関係性が理想です。

自由に意見交換できる環境

強いチームの条件として、「発言しやすい雰囲気」があります。立場に関係なく意見が言え、疑問をそのまま放置しない文化があるチームは、トラブルの芽を早期に摘むことができます。

営業とエンジニアが本音で議論できる時間や場をあえて設けることも、ミスコミュニケーションの予防につながります。日頃からの関係性づくりこそが、信頼に基づく連携を生むのです。

チーム連携の質=プロジェクトの成功率

営業とエンジニアがスムーズに連携している現場では、プロジェクトの成功率が明らかに高まります。その理由は、意思決定のスピードと精度、そして現場対応力にあります。

たとえば、営業が顧客の期待値や業務課題を的確に技術チームへ伝え、それに対してエンジニアが現実的な仕様やスケジュールで応じられれば、初期段階から軸のブレないプロジェクト設計が可能になります。また、要件変更やトラブルといった不測の事態にも、両者が迅速に連携できる体制があれば、修正対応やリカバリもスムーズに進みます。

さらに、顧客対応の一貫性という点でも連携は大きな意味を持ちます。営業と技術が同じ方向を向いていれば、顧客は安心して任せることができ、「次もお願いしたい」というリピートにもつながります。

連携とは単なる報告・連絡・相談ではなく、「相手の動きを理解し、先回りして動ける関係性」を築くこと。そこまでの連携ができているチームは、結果として品質・納期・顧客満足のすべてにおいて高い成果を出すことができます。

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