近年、多くの企業がテレワークやリモートワークを導入しています。通勤が不要になり、場所や時間に縛られずに働けるという点で、社員にとっても企業にとってもメリットがあるとされてきました。しかし、その一方で、社員同士の「コミュニケーション不足」が深刻な課題として浮かび上がっています。
管理職側は、「部下がどんな気持ちで働いているのかわからない」「業務の進捗が見えにくく、報告も遅れがち」など、対面でのマネジメントが難しくなることに不安を感じているのではないでしょうか。
本記事では、テレワークにおけるコミュニケーション不足が起こる背景を整理し、その影響とリスクについて解説します。そして、すぐにでも実践できる具体的な解決策もご紹介します。
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テレワークにおけるコミュニケーション不足
テレワークは柔軟な働き方を可能にし、社員のワークライフバランスを改善する手段として注目されてきました。自宅やコワーキングスペースなど、働く場所を自由に選べることで、生産性が向上したという声も少なくありません。
しかし、その一方で、オフィスという物理的な場が持っていた「自然な会話の場」「偶発的な情報共有の場」が失われたことにより、社内のコミュニケーションが希薄化するという課題が浮かび上がりました。
特に、雑談や気軽な声掛けといった“非公式なコミュニケーション”が失われがちであり、業務連絡のみに限定されたやりとりでは、関係性の構築が難しくなる傾向があります。このような状況が続くと、組織の連携が弱まり、仕事の質やモチベーションにも悪影響を与える可能性があります。
なぜテレワークでコミュニケーションが不足するのか？
タイミングや内容に躊躇してしまう
テレワークでは、相手の姿が見えません。オフィスであれば、「今話しかけてもよさそう」「ちょっと手が空いていそうだな」といった判断ができますが、リモート環境ではそれができず、「今連絡してもいいのだろうか？」と躊躇してしまうケースが多発します。
また、内容によっては「わざわざ連絡するほどのことではないかもしれない」と考え、結果として連絡を控えてしまう傾向も見られます。こうした小さなためらいが積み重なることで、チーム内でのコミュニケーションが徐々に少なくなり、意思疎通の機会が減っていくのです。
テキストだとニュアンスが伝わりにくい
リモートワークではチャットやメールなど、テキストでのやり取りが中心になります。しかし、テキストコミュニケーションは、声のトーンや表情、身振り手振りといった非言語情報が伴わないため、ニュアンスが伝わりにくいという特徴があります。
たとえば、「了解しました。」という返信ひとつでも、文面だけでは感情のこもった承諾なのか、仕方なく同意しているのかがわかりにくく、誤解を生むこともあります。誤解を避けようと表現に気を遣いすぎてしまい、結果として連絡自体を避けてしまうという本末転倒な事態に陥ることもあります。
ITリテラシーの差が影響する
テレワークの基盤はITツールです。チャットツール、オンライン会議ツール、ファイル共有システムなど、さまざまなツールを活用しなければなりませんが、すべての社員が同じレベルのITリテラシーを持っているわけではありません。
操作に慣れていない社員にとっては、ツールの使い方に戸惑い、それがコミュニケーションの壁となることもあります。「自分は苦手だから」と遠慮し、ますますやり取りが消極的になってしまうという悪循環に陥るケースもあります。
テレワークのコミュニケーション不足によって起こる問題
業務が滞りやすくなる
コミュニケーションが円滑でないと、ちょっとした確認に時間がかかるようになります。「この資料、誰が作成中だったっけ？」「進捗はどうなっている？」といった確認にメールやチャットを介する必要があるため、やりとりのスピードが落ちるのです。
また、やり取りの頻度が下がれば、情報の伝達ミスや抜け漏れが発生する可能性も高まり、業務全体の効率に悪影響を与えます。とくに、プロジェクト進行においては、各メンバーの情報共有が不十分だと、納期遅延や品質低下のリスクも増大します。
部下の悩みがわかりにくい
テレワーク下では、部下の表情や声のトーンから精神的な変化を感じ取るのが難しくなります。オフィスであれば、顔色や言動のちょっとした変化から「最近元気がないな」と気づけたかもしれませんが、リモートではそれができません。
部下側も、「些細なことだから」「迷惑になるかもしれない」と考えて相談を控えることが多くなります。その結果、問題が深刻化するまで管理職が気づけないというケースも珍しくありません。
社員が孤独を感じやすい
オフィスでは同僚と自然に会話が生まれますが、テレワークでは「話す機会」が意図的に設けられなければなりません。そのため、社員が孤独を感じやすく、特に新入社員や転職直後の人材にとっては、社内に頼れる人が見つけられないまま不安を抱えるケースが多くなります。
このような状況は、やがてモチベーションの低下を招き、最悪の場合は離職にもつながります。コミュニケーション不足は、社員の定着率やエンゲージメントに大きく関係する問題であると認識すべきです。
テレワークのコミュニケーション不足を解決する工夫
コミュニケーションツールの導入とルールの策定
まずは、誰でも使いやすいツールを導入することが大前提です。たとえば、SlackやTeamsのようなチャットツールは、メールよりもカジュアルにコミュニケーションを取れるため、やりとりのハードルを下げてくれます。また、ZoomやGoogle Meetなどのオンライン会議ツールも併用することで、顔を見ながらの会話が可能となり、非言語情報を補完できます。
ツールの導入だけでなく、利用ルールの明確化も欠かせません。「チャットの返信は原則として24時間以内」「雑談専用のチャンネルを作る」「緊急時は電話連絡を優先する」など、業務を妨げず、かつストレスにならないようなルールを策定しておくことが重要です。
業務状況を可視化する
業務の見える化は、テレワークの効率を高める鍵となります。誰が何の業務を担当していて、現在どの段階まで進んでいるのかを共有することで、管理職としての判断もスムーズになりますし、部下も「他のメンバーの動きがわからない」という不安を減らせます。
TrelloやBacklog、Notionなどのタスク管理ツールを活用することで、業務進行が一目で把握できるようになり、報告の手間も減らせます。また、定期的に進捗を共有することで、個々の働きすぎや取り残されを防ぐことにもつながります。
定期的なミーティングを設け、雑談を積極的に取り入れる
「雑談の価値」を軽視してはいけません。形式ばった会議だけでは、社員同士の関係性はなかなか深まりません。そこで、あえて“雑談の時間”を意識的に設けることが効果的です。
たとえば、週に一度の定例ミーティングの冒頭で「最近あった良いことを一人ずつ話す」など、雑談を促す工夫を取り入れることで、場の空気が柔らかくなり、心理的なハードルが下がります。
また、毎朝5分のミニ朝会や、月に一度のオンラインランチ会など、定期的に顔を合わせる機会をつくることで、自然とコミュニケーションが活性化します。結果的に、社員のメンタルケアやモチベーションの向上にも寄与します。
テレワークでは気軽にコミュニケーションを図る環境づくりが大切
テレワークという働き方は、多様な働き方を実現する一方、管理や連携の難しさという側面も持っています。特に「人と人とのつながり」が希薄になることは、業務だけでなく社員の心理状態にも影響を与えます。
コミュニケーションの重要性を再認識し、社員同士が気軽に声を掛け合える環境づくりが求められます。そのためには、適切なツールの選定と運用、業務の見える化、雑談の習慣化など、いくつかのポイントを押さえたマネジメントが不可欠です。